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わたしが・棄てた・女

紹介文

 「ぼく」こと吉岡努は、友人と2人で物ぐさで貧しい下宿生活を送る大学生。ある日、雑誌の文通欄で見つけた「平凡な娘」に下心を忍ばせて手紙を書く。その娘は容貌も冴えない田舎娘の森田ミツであった。ミツは吉岡に夢中になるが、やがて「ぼく」はこのミツを『犬ころのように』棄ててしまう…。
 ミツの邪心のない清らかさは、「ぼく」の残酷さを際立たせるが、あまりの無垢ぶりは愚かに見え、「目を覚ませ!」と叫びたくなるほどだ。しかし、これは死ぬ間際まで貫かれる彼女の正真正銘の純真であった。ミツの可哀想すぎる運命と最期の言葉を知った「ぼく」は、身勝手な振る舞いであったことの呵責を感じつつも、『誰だって…男なら、することだからな。俺だけじゃないさ。』と尚も自分に言い聞かせる。その一方で、ミツが自分の人生に消すことのできない痕跡を残したことに気がつく…。

 遠藤周作はキリスト教信仰者であり、『海と毒薬』や『沈黙』をはじめとして、「神」と「信仰」を問いかける作品が多い作家です。彼の作品を「純文学」と「大衆文学」に分けると、この『わたしが・棄てた・女』はその接点に立つ作品と評されています。打算的な青年が、健気な娘を弄ぶという大衆小説的な始まりですが、読み進んでいくうちにシリアスになり、やはり「神」や「愛」の問題に繋がっていきます。
 私たちはミツのような精神を持てるのだろうか? 吉岡のエゴは特別なものだろうか?
 自分の人間性を確かめる一冊かもしれません。

紹介者
くちびる山
書名 わたしが・棄てた・女
著者名
遠藤周作
分野
小説
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所在
閉架
請求記号
913.6/E (閉架番号:CS905277)