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ベンチャー2025年:帝国の光

紹介文

 『帝国の光』は、1997年に出版された。出版時点で28年後にあたる2025年の日本社会をシュミレーションした小説である。この小説の根底には、「高度なテクノロジーを有する新たな社会システム」という未来への眼差しと、「古き良き日本への回帰」という過去への眼差しという二つの潮流がある。
 2025年は、光世紀と呼ばれる超インターネット社会。行政は、完全地方分権制へとシフトし、日本は都市国家型連邦国家へと変貌を遂げている。ICTの発達と物流革命により、中央と地方という概念はもはやなく、優れた行政の市町村には人が集まり、そうでなければ過疎化が進む。資本主義社会は終わりを告げ、知識こそが尊ばれる知本主義社会を迎えた。人々の関心は「金」から「幸せとは何か」へと変化した。
 こうした変化により、各市町村は個性を持つようになり、地方文化が再発見された。大量消費への反省から、良いものを作る農家や町工場が尊ばれ、家庭を重んじる等ライフスタイルも見直された。テクノロジーが高度に発達しつつも、古き良き日本が蘇った未来が、ここには描かれている。「伝統と革新」が共存した未来社会である。
 この小説の舞台は、出雲地方にある超電脳都市「瑞穂ポリス」。シリーズ1作目である本作では、なぜこの都市が作られたのかは明らかにされない。国造り神話の地、神々が集まる地である出雲が舞台であることに謎を解く鍵がありそうだ。なぜなら、古き良き日本の民は、神々の存在を信じ、神々とともにあったのだから。
 ICTの発達の描写のみならず、国際情勢や原発問題等においても、まるで今書いたかのように著者のシュミレーションが冴え渡る本作。2025年、荒巻氏のシュミレーションはどのくらい現実になっているのだろうか。

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荒巻義雄:札幌在住のSF作家。札幌時計台ギャラリー代表でもあり芸術に造詣が深いことでも知られる。2012年、詩集『骸骨半島』で北海道新聞文学賞を受賞。
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他の所蔵作品
・『帝国の光 : 東京帝国主義』913.6/A-2(3F一般図書)
・『天女の密室』CS904816(閉架書庫)
・『60年代日本SFベスト集成』913.608/R(2F文庫新書/ちくま文庫)所収「大いなる正午」
・『日本SF全集』2巻913.68/N-2(3F一般図書)所収「柔らかい時計」

紹介者
幽玄
書名 ベンチャー2025年:帝国の光
著者名
荒巻義雄
分野
近代 : 明治以後 個人の単一小説
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所在
3F一般図書
請求記号
913.6/A-1