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日本の川を旅する : カヌー単独行

紹介文

 1980年代初頭、筆者の野田氏がカヌーで日本中の川を下った時のエッセイ集です。テントや衣類の最少限の装備を一人乗りのカヌーに積み、源流から河口まで何日もかけてゆっくりと下って行きます。天気のいい日は水遊びをしながら獲った魚を焼いて食べ、雨の日はテントの中で本を読む。食料がなくなれば、川沿いの過疎の集落を尋ねて食事を提供してもらい、老夫婦がする土地の歴史や暮らしの話に耳を傾ける。自由で優雅で、そして何ともたくましいカヌー旅ですが、当時の流域の村々や人々の様子を知ることができるという意味で、単なる旅行記というだけでなく、とても貴重な歴史的、民俗的資料にもなっています。
 野田氏は「日本の川はだいたい潜って、底をナメるように見て下ったから、ぼくの頭の中には日本中の川の淵や瀬、川底の岩や砂の色、そこに棲む魚の種類まで、詳細に書き込まれた「川地図」がある」と言います。それほどまでに日本の川を愛し自らの生活の一部にしていた野田氏だからこそ、行き過ぎた護岸工事やダム工事が各地の清流を滅ぼしている状況を憂う声には説得力があります。
 今は国内でも国外でも気軽に出かけられる時代になりましたが、野田氏のように、訪れた土地の自然や歴史そして人々と濃密に関わることができる人は少ないと思います。タイトルにある通り、「旅行」ではなく「旅」をする人の姿がこの本には描かれています。

注:本書では今の時代の読者には不適切と感じられるジェンダー観が所々で披瀝されています(私もいい感じはしませんでした)。ほぼ40年前のことなので仕方がない部分はあるのかもしれませんが、あらかじめ警告しておきます(笑)。

紹介者
柳町 智治 先生
所属学部
文学部
書名 日本の川を旅する : カヌー単独行
著者名
野田 知佑
分野
日本 紀行
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所在
3F和書
請求番号
291.09/N