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これからの経済原論
紹介文
戦後日本を代表する経済学者の一人に宇野弘蔵という人物がいる。宇野はK.マルクスの『資本論』を独自の方法論をもって再構成し、世界的にも例をみない独創的な経済学体系を構築した。宇野の学説は当時異端として扱われたものの、東大を中心として宇野の方法論を踏襲するグループが徐々に形成され、いつしかこれは「宇野学派」と呼ばれるようになり、大きな影響力をもつようになった。しかし時は流れ、経済学のフィールドにおいて宇野学派の存在感は次第に薄らいでいった。数十年にわたり継承されてきた東大における宇野学派の原理論ポストも、2016年3月、小幡道昭氏の退職をもって最後消滅した。 本書は、傍目には衰退あるいは消滅したとさえ映りかねない21世紀における現況の宇野学派を、火中の栗を拾うかのごとく自ら背負っていかんとする、4名の若手研究者による宇野学派の最新の原理論テキストである。とはいえ、全220ページのどこにも、反骨精神や不撓不屈といった類いのチープな気負いは全く感じられない。新古典派的な方法論が当然視されている現在、著者らが宿命として選びとった「自らの学派が消滅するかもしれない」という危機感は、本書にあっては宇野学派直系の冷静かつ野心的な論理展開に昇華されている。衰退の文字など、どこ吹く風。学問的な正しさは支持者の数で決まるわけではない。美辞麗句で埋め尽くされた分かりやすいだけが取り柄の言説に一切の必要はない。宇野学派の、そして経済学のこれからは、本書をもって封切となる。
紹介者 |
柴崎 慎也 先生
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所属学部 |
経済学部
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書名 | これからの経済原論 |
著者名 | |
分野 |
経済学
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蔵書検索 | |
所在 |
3F和書
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請求番号 |
331/K
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