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幕末の下級武士はなぜイギリスに骨を埋めたのか
紹介文
「長いタイトルだなあ」というのが第一印象。「でもこのタイトルしかないなあ」というのが読後の感想。無名の主人公を題材にするにはこれしかない。 驚き満載の実話。 大政奉還の前年(1866年)に一般人として初めてパスポート(御印章)が発給された。受け取ったのは曲芸師たち。曲芸師は一座を組み、3組もの曲芸・大道芸一座がその年に米国に渡る。そして1867年には大西洋を渡って英国に入る。その後、1870~80年代には、英国各地で日本村ブームが起きる(いわゆるテーマパーク)。英国人たちは、遅れて「発見した」日本という国に大いに興味を持ったのである。 主人公、フデこと近藤筆吉は、生粋の曲芸師や大道芸人ではない。出自は傘張り職人で、一座では曲芸も見せたようだが、もっぱら大道具・小道具の修理係。タイトルには下級武士と書いてあるが、そして英国では武士として紹介されたようだが、フデは決して武士ではなかった。 日本で下層階級に属していた芸人たちがパスポートを持って海を渡り、米国でもそうであったように、英国でも熱狂的に迎え入れられ大いに活躍する。何とも痛快である。同時に、往事の英国生活を伺い知ることができて興味深い一冊だった。 パスポートの有効期限が2年にもかかわらず、そしてほとんどが帰国したにもかかわらず、フデは英国に残る。結婚し1907年に彼の地で一生を終えた。 でもフデ。亡くなるまで、ほぼ英語ができなかったという。
紹介者 |
大原 昌明 先生
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所属学部 |
経済学部
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書名 | 幕末の下級武士はなぜイギリスに骨を埋めたのか |
著者名 | |
分野 |
伝記
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蔵書検索 | |
所在 |
3F和書
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請求番号 |
289/K
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