世界規模的な視点と尺度（スタンダード）に基づいて展開されている今日の経済社会において，そこでの主なプレーヤーは，グローバルに行動する企業集団と投資者である。このような企業集団と投資者を結びつける重要なツールのひとつが，ビジネスの言語とも呼ばれる会計情報である。グローバル企業集団の親会社は，世界中の各関係会社を含めた連結財務諸表の開示を通じて，世界の投資者から資金調達を図る。このときの会計処理に一組（ワンセット）の会計基準が世界中で適用できれば，企業と投資者の双方にとって効率的状況が生まれる。このグローバルな会計基準の地位を着々と獲得しつつあるのが，「国際財務報告基準（IFRS）」である。日本でも，昨年以来，日本企業の連結会計基準としてIFRSの適用を認めることが，公的に（金融庁等で）議論され始めている。 　本書は，このIFRSに関する近刊書（09年1月）である。本書は，EU諸国を初めとして100ヵ国以上で採用されているIFRSについて，日本での採用に際して企業経営がどのように対応していかねばならないのかを，要領よく述べている。著者たちは世界的監査法人に在籍する会計専門家であるが，本書はIFRSに関する詳細な解説書ではなく，むしろ，会計に関する知識が十分でない非専門家を読者と想定したものである。本書の各章のポイントは以下のとおりである。 第1章・・・IFRSの概要と，世界各国・地域におけるIFRSの受入状況。 第2章・・・IFRS採用国・地域の実践例を参照した，IFRSの基本的アプローチ（原則主義）。 第3章・・・IFRSの適用が企業や投資者に与える利点と欠点。 第4章・・・IFRSの適用に伴う，企業の各種戦略の再構築の必要性。 第5章・・・IFRSの適用が企業のM&A戦略に与える影響。 第6章・・・IFRSの適用に際して，企業が行うべきプロジェクトの概要。 第7章・・・IFRSに対する企業の捉え方。 本学でも，会計専攻以外の学生諸君に広く読んでいただきたい。