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われらのゲーム

紹介文

(再掲載:2008年10月掲載)   みなさんは、先日、グルジアに大規模な侵攻をしたロシアの事件を覚えていらっしゃるでしょうか?あの事件はロシアの強硬手段のみが喧伝されてマスコミには取り上げられましたが、歴史的には非常に古くからの民族問題や政治・経済問題が絡み合って起こった事件です。でも未だに、どこで起こった何の事件か全然ピンと来ないと思っている人も多いと思います。確かに日本からは遠く離れた馴染みのない事件ではあります。  さて、この本はロシア地域の紛争について解説した本ではなく、その紛争に巻き込まれるイギリスのスパイを主人公にした、エスピオナージュ(スパイ小説)です。しかし、ミステリィの範疇を越えて、組織や国家と自分の生き方とのギャップに悩むスパイたちの行動やイギリスを中心にした国際政治の舞台裏も丁寧に描かれた、なかなか読み応えのある作品です。出版された当時、その年の外国ミステリィ・ベスト10の中にも選ばれた佳品ですが、未だに題材もストーリーも色あせることなく、むしろ今だからこそその内容が明確に理解できるのではないかと思います。10年以上経ってこの本の中に出てくる「南オセチア」などというお馴染みでない地名がリアルな現実感を伴ってわかるようになりました。作者のジョン・ル・カレはイギリスのミステリィ作家としては既に大家ですが、現在でもアフリカの貧困問題を題材にした「ナイロビの蜂」(この作品は映画化されてアカデミー助演女優賞もとりました)などのベストセラーの作家として知られていますが、エンターテイメントと文学の要素を併せ持ったすばらしい作品をいくつも発表しています。

紹介者
田辺毅彦先生
所属学部
文学部
書名 われらのゲーム
著者名
ジョン・ル・カレ
分野
英米文学
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所在
3F和書
請求番号
933.7/C