今回紹介するのは、本の情報誌の読者投稿企画で寄せられた短歌を歌人の穂村弘が選び、講評してまとめた本です。
　読者企画のため、私たちのような一般の人が詠んだ歌が並びます。出来事や物など、ひとつのテーマに沿ってつくられた歌は、瞬間瞬間を鮮烈に切り取っていて驚きます。テーマが身近なため、自分の経験と重なることも多く、詠まれた光景が目の前に浮かぶようです。それぞれの歌に添えられた穂村さんの講評のおかげで難解に感じることがなく、理解もしやすくなっています。五・七・五・七・七という短い制約のなか、こんなにも人は自分の思いや情景を豊かに表現できるのかと感動します。
　テーマごとに並ぶ歌と講評はちょっとした隙間時間に読むのにぴったりです。電車の待ち時間や寝る前など、たまにスマートフォンを手放して言葉の旅に出てみるのはいかがでしょうか。言葉のもつ力に改めてわくわくすること請け合いです。