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見えがくれする都市
紹介文
「代官山ヒルサイドテラス」、千駄ヶ谷の「東京体育館」、ワシントン大学「サム・フォックス視覚芸術学部」等の設計で知られる建築家の槇文彦が、設計事務所の仲間と共に東京の都市空間の特性を解明しようと試みた30年前の著作。 過去数十年間の日本の都市の変化は、必ずしも住み良い町への方向には向かっていないこと、しかし、都市環境改善のための提案をするには、都市についての我々の認識が実は非常に乏しいことを踏まえ、大は東京各地区の歴史、自然地形や道路パターンから、小は住宅街の生け垣やフェンス、路地に置かれた植木鉢に至るまでを対象とし、誠実で謙虚な調査と観察を重ねる。結果、著者は、「好ましい環境性とは、個別にあらわれた工夫とか、お金のかけ方ではなくて、むしろ、多くは、ある地域社会なり集団なりが歴史的にもち続けてきた環境への願望が、形態とか空間に照射され、維持された場合であることに気づいた」。 「都市をみる」、「道の構図」、「微地形と場所性」、「まちの表層」、「奥の思想」の5つの章での分析から導き出された「奥」や「すきま」、「薄い平面」といった概念は、西洋のものとは全く異なった東京の都市空間の特性を繊細に規定すると同時に、我々が都市を歩く際に抱く感覚を見事にすくい上げるものとなっている。 推薦者はむかしむかし学生時代にこの本を読み、分析の手際の良さに目を見張り、また東京そして日本の町の美しさを再認識させられたことを憶えている。都市を見る視力をアップさせてくれる1冊。
紹介者 |
遠藤太郎先生
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所属学部 |
短期大学部
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書名 | 見えがくれする都市 |
著者名 | |
分野 |
都市工学
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蔵書検索 | |
所在 |
閉架(CS063768 )
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請求番号 |
518.8/M
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