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人間の測りまちがい : 差別の科学史

紹介文

 知能テストというものは,知的障害を持った子どもをできるだけ早く見つけ出し,特別支援教育の対象にするのが目的で作成されました。知的能力が実年齢に一致していればIQ(知能指数)は100になります。IQが一定の基準以下なら,通常の学校教育についていけないだろうと判断するわけです。一般にIQが高いと“天才”などと呼ばれることがありますが,世の中にIQ150以上の人は何万人もいますし,全員が歴史に名を残すような偉業を達成できるわけではありません。IQは低い場合に教育上の問題があると考えられますが,高い場合は,潜在能力が高いとは言えるかもしれませんが,特に社会的に重要な意味はないのです。  しかし我々はIQが高い人は頭がいい,天才だ,と素朴に判断します。しかもそのような判断が,科学的な裏付けを持った,正しい判断であると考えがちです。特に意味のない,時には誤った判断が,科学的根拠がある絶対的に正しいことのように信じられ,社会に広まってしまうことがよくあります。事実,知能テストやIQには,間違った使われ方が広まり,結果として特定の集団に対する偏見を植え付け差別するための,科学的根拠として用いられたという不幸な歴史があります。  この本は「差別の科学史」という副題がある通り,科学的な研究がどのようにして偏見や差別を生み出すのか,また偏見や差別意識がどのようにして科学的研究そのものを歪めてしまうのかというテーマを扱っています。 著者のS.J.グールド氏は著名な生物学者・進化論者で,エッセイストとしても有名な人です。専門的な内容を誰にでもわかる平易な言葉で解説し,しかも感動を与えるという難しいことをいとも簡単にやってのける,名エッセイストです。  皆さんも,この,まるで探偵小説のような長編科学エッセイをぜひ楽しんで下さい。

紹介者
柴田利男先生
所属学部
社会福祉学部
書名 人間の測りまちがい : 差別の科学史
著者名
スティ―ヴン・J.グ―ルド
分野
人類学
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所在
閉架(CS134405)
請求番号
469/G