図書館員のおすすめ本
わたしたちが孤児だったころ

紹介文
主人公バンクスは、生き別れた両親を探す旅の中で、いくつもの分岐点に立ち、自身の曖昧な記憶――つまり「思い込み」によって、物語は予期せぬ方向へと展開していきます。一度読んだだけでは理解が難しいと感じる方には、平井法氏による以下の論文を併せて読むことをおすすめします。
「1960年に作者イシグロは両親とともに渡英したが、渡英から10年後、再会を果たすことのないまま祖父が逝去した際の喪失感は、推測して余りある。イシグロ作品にしばしば描かれる祖父と孫との交流には、こうした実体験が重ねられているのだ。」
※出典:学苑・文化創造学科紀要 第805号(2007年11月)P28
平井法著『わたしたちが孤児だったころ』論 ―上海へのノスタルジーをめぐって
記憶の奥深くを彷徨いながら、その先にある光を追い求める――果たしてその光は本当に見えるのか。物語は意外性に満ち、徒労感が積み重なっていきます。旅好きだけれど、なかなか旅に出られない方には特におすすめしたい一冊です。
読後には、まるで長い旅を終えたかのような、脱力感が訪れることでしょう。
紹介者 |
しまふくろう
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書名 | わたしたちが孤児だったころ |
著者名 | |
分野 |
近代小説.物語
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蔵書検索 | |
所在 |
3F和書
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請求番号 |
933.7/I
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