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カズオ・イシグロ:「日本」と「イギリス」の間から

紹介文

本書は、カズオ・イシグロ氏の家庭環境や祖父母、両親との関係性を掘り下げ、彼の文学作品に与えた影響を考察する一冊です。
 イシグロ氏が5歳のとき、父親の仕事の都合で家族は英国へ渡りました。当初は一時的な滞在の予定で、数年後には帰国するつもりだったといいます。しかし約10年後、父親同然だった祖父が長崎の家で亡くなり、再会を果たすことなく別れを迎えることとなりました。
 
その時の心情について、イシグロ氏はインタビューの中でこう語っています。
「(略)何かもっと深いレベルでそれは祖父母を裏切ってしまったような気持ち、おそらくある種の奇妙なうしろめたさを私に残したんです。」
 
イシグロ氏は21、22歳の頃から日本への関心を持ち始め、薄れゆく自身の「記憶と想像の日本」を、初期の長編作品に閉じ込めたと語っています。
 本書のなかで遠藤不比人氏は彼の幼年期に精神的外傷を仮定し、それこそがこの作家の文学的な強度を担保していたと語っています。初期の作品に描かれるイシグロ氏の『日本の表現』は、ずっと日本で生活してきた私たちよりも、どこかノスタルジーを感じさせるように余韻を残します。

紹介者
しまふくろう
書名 カズオ・イシグロ:「日本」と「イギリス」の間から
著者名
荘中 孝之
分野
20世紀―の作家の個人伝記
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所在
3F和書
請求番号
930.278/I