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カズオ・イシグロと日本:幽霊から戦争責任まで

紹介文

本書では、世界各国の研究者たちが「イシグロと日本」というテーマのもと、アーカイヴ資料を駆使しながら、カズオ・イシグロ氏の作品に潜む『日本』の痕跡を丹念に探っています。秦邦生氏はあとがきで、「今回のテーマ『イシグロと日本』は、この作家の全体像を把握するために欠かすことのできない、パズルの一片なのではないか」と述べ、締めくくっています。なかでも私が特に興味を惹かれたのは、加藤めぐみ氏による「幻のゴースト・プロジェクト」です。ハリー・ランサム・センターに所蔵されている資料を丁寧に読み解きながら、イシグロ氏と日本の幽霊文化との接点を探る内容で、非常に刺激的でした。10のセレクションのうち③では、溝口健二監督の映画『雨月物語』(1953年)に焦点を当て、その美学と感性に深い関心を寄せています。
 私自身も『遠い山なみの光』を読んだ際、イシグロ氏が描くノスタルジックな日本の風景の中に、『雨月物語』の感性が息づいているように感じ、その謎が少し解き明かされたような気がしました。

紹介者
しまふくろう
書名 カズオ・イシグロと日本:幽霊から戦争責任まで
著者名
田尻芳樹, 秦邦生編 ; レベッカ・L・ウォルコウィッツ [ほか著]
分野
20世紀―の作家の個人伝記
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所在
3F和書
請求番号
930.278/I