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カブールの園

紹介文

 第30回三島由紀夫賞を受賞した『カブールの園』は、祖父が体験した日本人収容所の記憶を背景に、移民三世レイの幼少期のトラウマ、母との葛藤、アイデンティティの揺らぎ、そして言語との向き合いを繊細に描き出しています。さらに、全米を放浪した詩人アレン・ギンズバーグの名もひっそりと紹介されており、より作品に深みを与えています。
 わずか90ページほどの短編ながら、その内容は重く、心に響きます。特に印象的だったのは、リンドン先生の言葉——「もう十年もすれば、自然と収まってきますから。怒るという集中力そのものが、ぼやけてくるものなのですよ……」(P60)。この一節は、心の痛みに染みわたり、癒しの安らぎを残します。
 本書にはその他、『半地下』も収められており、アメリカで懸命に生きる姉弟の姿が描かれています。

紹介者
しまふくろう
書名 カブールの園
著者名
宮内 悠介
分野
近代小説.物語
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所在
3F和書
請求番号
913.6/M