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クォンタム・ファミリーズ

紹介文

『量子力学』の概念を巧みに取り入れた本作(第24回 三島由紀夫賞)は、読者にいくつもの世界を体験させてくれます。
 物語は、小説家である主人公のもとに「娘」を名乗る人物から届いた一通のメールから始まります。そこから彼は、生まれてこなかったはずの子どもが存在する世界や、異なる人生を歩む自分がいる世界など、複数の現実が交差する不思議な世界へと導かれていきます。さらに、妻が発症する「検索性同一性障害」は、情報過多の世界における心の病として描かれ、現実に置き換えて読むとその恐ろしさが一層際立ちます。さらに、村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が登場する場面を境に、現実と非現実の境界が曖昧になり、読者はまるで並行世界を行き来しているかのような感覚に包まれます。
 『量子力学』に興味をそそられた方には、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

紹介者
しまふくろう
書名 クォンタム・ファミリーズ
著者名
東 浩記
分野
近代小説.物語
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所在
3F和書
請求番号
913.6/A