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世界を信じるためのメソッド : ぼくらの時代のメディア・リテラシー
紹介文
私たちは日々、膨大な量の情報に接しています。あちこちで起きる事件・事故。政治家の不祥事。芸能人のゴシップ。ブログやツイッターによる個々の発信…。こんな情報漬けの世の中を、私たちはどう生きていけばよいのでしょう。筆者はオウム真理教を扱ったドキュメンタリー映画「A」を制作した人です。1人ひとりは心優しく、穏やかな若者たちであるこの教団がなぜ、凶悪犯罪集団となったのか。その答えを求め、森さんは1人でカメラを回しました。この仕事を通して森さんが確信したのが「メディアは嘘をつく」ということです。 「嘘」というと、まったくのでっち上げを連想するかもしれません。でも、この本が指摘する「嘘」は、もっと巧みです。何をニュースに選ぶか、どの事実を強調するか、どう単純化するか。編集側の意図で、ニュースは白を黒にすることも、黒を白にすることもできる。そういう意味で、森さんは「嘘をつく」と言っているのです。一貫して書かれているのは、メディアそのものがもつ危険性です。第一次世界大戦後、ドイツの国民を熱狂的なヒトラー支持者にしたのは映画やラジオです。遠い昔の過ちばかりではありません。松本サリン事件で、日本のメディアが被害者の河野義行さんを半年にわたって犯人扱いしたのはつい17年前です。「集団が暴走するとき、メディアはこれ以上ないほどの潤滑油となる」。森さんはそう訴えます。 ではこの危険な存在とどう付き合えばよいのか。森さんは「事実は限りない多面体であり、メディアが提供する断面はあくまでもその1つにすぎない、とたえず意識すること」と結論づけます。重いテーマをやさしく書いた1冊です。
紹介者 |
阪井宏先生
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所属学部 |
文学部
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書名 | 世界を信じるためのメソッド : ぼくらの時代のメディア・リテラシー |
著者名 | |
分野 |
社会学
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蔵書検索 | |
所在 |
3F和書
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請求番号 |
361.453/M
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