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図書館員のおすすめ本

はくしむるち 

紹介文

『ウルトラ』シリーズを手がけた沖縄出身の脚本家、金城哲夫氏と上原正三氏。彼らの創作への葛藤は、NHKドラマ『私が愛したウルトラセブン』(1993)やドキュメンタリードラマ『ふたりのウルトラマン』(2022)などで語り継がれてきました。私は、『帰ってきたウルトラマン』や『ウルトラセブン』を観て、幼い心に熱い思いが産まれる瞬間があったことを思い出します。

 本書は沖縄を舞台に、現代を生きる若者たちと戦争の中を生きた大叔父の話が絡み合いながら、『ウルトラシリーズ』、『AKIRA』、『卒業』、『エレファントマン』など、サブカルチャーの断片がめまぐるしく突っ走ります。
 スピード感ある話のなかに視点を終始切り替えながら繰り返し問われかけ続けているのは、「自由とは?」「友とは?」「ヒーローとは?」というテーマだと感じます。
 いじめと戦争、絶対的な権力の差、理不尽な暴力、抗えない虚しさ、幾重にも重ねられた歴史の反復、私たちは彼ら(サブカル)であり、彼ら(サブカル)は私たち、無気力な(上っ面)世界観に熱い感情が紙面に充満します。若者たちが見た沖縄の過去と未来が描かれながら、本書が見つめているのは沖縄だけの話ではなく、沖縄の現状を閉塞感ある鬱屈の傷跡を滲みだし、ゆがんだ現代社会そのものを映し出します。SNSによって容易につながりながらも孤独を抱え続ける若者たちが、戦中・戦後の沖縄の記憶と響き合い、過去と現在が交差しているようにも感じられました。
 その昔、ウルトラマンの脚本家たちが見つめてきた「人間」の光と影が呼び覚まされる、ひときわ野心的で刺激的な一冊でした。

 

紹介者
しまふくろう
書名 はくしむるち 
著者名
豊永 浩平
分野
近代小説.物語
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所在
3F和書
請求番号
913.6/T

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