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林芙美子

紹介文

 強く生きる人間の姿を、素直に逞しく描く作家です。解説の田辺聖子は「林芙美子は人間を描くのに、情が濃い。」「作品に熱っぽさを与える。」と表現していますが、まさしくその通りの登場人物たちです。  貧しく、食べ物の心配ばかりしなければならない時代の中で、それでも恋愛を繰り返し、3人目の男の妻となっている「清貧の書」。冷たい夫が徴兵先から送ってくる手紙の、だんだん長く甘くなっていくことにじんときます。「魚の序文」では、隣りのお墓から花をもってきて部屋に飾って楽しむ姿が印象的です。食べ物がなくて、野草を茹でて食べたりします。貧しい生活を描いていながら、明るさを感じさせる作品です。「泣虫小僧」の母親はすごいです。「お前のような子供はどっかへ行ってしまうといいんだ。」と、現代では虐待とみなされそうな暴言を次々と小さな息子にぶつけます。ひどい人がたくさん出てきますが、当時はデリケートなことなど言っていられる時代ではなく、みんなそれぞれの置かれた状況で逞しく生きていたのだということが、現代の私たちにとっては発見だと思います。  林芙美子の年譜も面白いです。初期の作品には私小説的な部分もありますから、年譜を見てから本文を読んでいくと理解が深まるかもしれません。

紹介者
職員B子
書名 林芙美子
著者名
林芙美子
分野
日本文学
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所在
閉架(CS122370)
請求番号
918.6/C-20