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ピエタ

紹介文

 この小説は、読む人の経験値により捉え方が大きく異なる作品かもしれない。    私は、この本の底辺に流れるものは「過去との対峙」ではないかと感じた。  恩師である音楽家・ヴィヴァルディの遺したある一枚の楽譜。エミーリアは、その楽譜の行方を追ううちに、生前知り得ることのなかった恩師の過去に触れる。そしてその過程で、長い間目を背けていた自身の過去ともついに対峙することになる。  この小説の登場人物は、それぞれが様々に己の過去と対峙する。過去を切り捨て未来へと旅立つ者。愛する人と過ごした過去を支えとして生きていく者。過去に潜んでいた真実を知り新しい未来を得る者。交錯する登場人物たちの過去・過去・過去。  人は、ときに過去に囚われて身動きがとれなくなってしまうことがある。一方で人は、過去を心の糧にすることで、あるいは過去を反省することで未来を生きられることもある。  しかし両者は、表裏一体ともいうことができるのではないだろうか。過去は変えることはできない。変えられるのは未来。未来は、人がそれまでの自分の過去をどう捉え、どう咀嚼していくかによって大きく変化する。  どう過去と対峙するか。自分と重ね合わせながら読み進めてはいかがだろうか。 

紹介者
幽玄
書名 ピエタ
著者名
大島真寿美
分野
小説
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所在
3F和書
請求番号
913.6/O