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パリ左岸のピアノ工房

紹介文

 鍵盤をはじくと、“ぽん、ぽん”と美しい音色が瞬時に奏でられるピアノ。  一つ一つの鍵には、三十を超える部品が接続しており、鍵をぽんとはじくとそれらが複雑に連動し美しい音楽が生まれる。グランドピアノの内部を覗くと、鍵から連動しているハンマーが無数の弦を叩く様子が見え、ピアノが秘めている音を生み出す仕組みの不思議に魅了される。  ピアノは、その大きさから楽器としてだけではなく家具調度としての一面も持ち、時に素晴らしい彫刻や美しい木目を活かした塗装がほどこされる。しかし、芸術品とも言えるピアノは一方でその大きさ故に、持ち主の生活や金銭的な境遇の変化から自らの居場所を転々とせざるを得ない運命にある。  パリ、セーヌ川の左岸、繁華街から離れた静かな通りに、“デフォルジュ”というピアノ部品店がある。一見小さなピアノ部品店に過ぎないこの店は、その奥に大きな秘密を持っている。  そこは、さまざまな人々の人生に関わり流れ着いた中古ピアノを蘇らせる“ピアノ工房”。  その工房の職人リュックは、天使が現れたかのように中古ピアノを迎え入れ、多くの愛情を注ぎ新たな生命を吹きこむ。一台一台のピアノがすべて職人の手作業によって作られていた古い年代のピアノほど、個性に富みさまざまな性格を持っている。リュックは、ピアノへの深い理解を持ち、時には探偵に、時には考古学者になり、それぞれのピアノに向かい合う。  作者はそんなリュックと出会い、彼の熱意に触れ、そして工房にある個性豊かな歴史あるピアノたちに出会う。そして、彼の心に蘇るピアノへの情熱。幼い頃のピアノとの思い出。  彼は、リュックに導かれるかのように一台の中古ピアノと出会う。ウィーン・シュティングル社製のピアノ・・・。彼とピアノの新しい人生が始まったのである。  このノンフィクションを読むと、過去にピアノを奏でていた経験のある人の胸には、誰の胸にもピアノへの想いが溢れるであろう。部屋の隅でインテリアと化してしまっていたピアノの蓋を、そっと開けたくなる・・・そんな一冊です。

紹介者
幽玄
書名 パリ左岸のピアノ工房
著者名
T. E. カーハート
分野
エッセイ
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所在
3F和書
請求番号
763.2/C