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バベルの犬

紹介文

 かけがえのない人を失う悲しみ。  人はときに、その深い悲しみのあまり、常軌を逸した行動をとってしまう。大切な人を失ったことのない者には、到底理解することのできない、悲哀に包まれた狂気とも思える行動。  愛する妻レクシーを突然の事故で失ったポール。彼は、妻の死の真相を知るため、唯一の事故の目撃者である飼い犬ローレライに言葉を教えようとする。犬に真相を語らせるために。  そして、正常な判断力を失った彼は、犬の喉に外科手術を施し発声させようとする危険な集団に、妻の残した犬ローレライを近づけてしまう。  狂気の沙汰としか思えないその行為。  しかし、彼の悲しみ、苦しみ、嘆きを誰が理解できよう。  ポールは、ローレライに言語レッスンを行う日々の中で、レクシーとの出逢いから彼女の死までの生活を振り返る。彼女が、毎日何を思い、生きてきたのか。もしかすると、レクシーが生きていたころよりも強く彼女のことを理解しようと願う。そして、それは彼の生きる支えとなる。  レクシーは、生前、ポールにもっと理解されたい、幾年も愛され続けたいと願っていた。  彼女の死により、彼女の願いは叶えられたのかもしれない。なぜなら、ポールは、気が狂うほどにレクシーの死を悲しみ、彼女を愛し、理解しようともがき苦しんでいる。彼は、彼女の死ゆえに、生涯レクシーを想い愛し続けるのではないだろうか。  人と人が真に理解し合うこと。それは、たとえ親子の間であっても難しいことである。ポールが、どれだけレクシーを愛していたのか。レクシーは、それをどのくらい理解していたのだろうか。

紹介者
幽玄
書名 バベルの犬
著者名
キャロリン・パークハースト
分野
20世紀小説
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所在
3F和書
請求番号
933.7/P