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清貧の思想

紹介文

 私は、ある作家が好きになると一連の作品を読みあさる。最近ではKAZUO ISHIGURO がお気に入りだ。
 代表作「The Remains of the Day」をきっかけに、ほぼ全ての作品を読んだ。彼の作品には「A Pale View of Hills」や「An Artist of the Floating World」のように戦前の日本を回想させるものが多く親しみやすい。今が旬のノーベル賞作家の紹介も頭をよぎったが「その前に読んでおくと彼の作品の理解がもっと深まる」と考えた本の一つが「清貧の思想」だ。
 本書では、与謝蕪村や松尾芭蕉といった各時代を代表する人物の生き方を通して、物質万能の日本文化ではなく、「節度」や「規範」といった心の世界を重んじることが日本的価値の美しさであると説いている。各章は短く、また馴染みのある人物の章を読むだけでも良い構成となっており読みやすい。この作品の推薦理由がもう一つある。史上かつてないほどの外国人ツーリストが北海道にも押し寄せるようになり、海外渡航せずとも、彼らの考え方に触れることができる時代になった。私が出会った外国人の中には、日本的な内面の価値観や、さらに北海道であればアイヌの自然に寄り添う生き方に共感し来道する方も多く、彼らの目を通して日本人としての認識を深めることがある。
 本学には、多くの留学生がきており、またそれをはるかに凌ぐ数の学生が海外留学を果たしている。留学生を受け入れる前に、そして渡航前に、本書を手にとっていただきたい。日本文化の案内書にとどまらず、海外での自分自身の立ち居振る舞いに示唆を与えてくれるであろう。欲張りなお願いだが、本書に続けてISHIGURO 作品もぜひ読んでいただきたい。

※カズオ・イシグロ作品
・忘れられた巨人 【 所在:3F 和書 請求記号:933.7/I】
・わたしを離さないで 【 所在:3F 和書 請求記号:933.7/I】
・遠い山なみの光 【 所在:3F 和書 請求記号:933.7/I】
・わたしたちが孤児だったころ 【 所在:3F 和書 請求記号:933.7/I】
・充たされざる者 上・下 【 所在:3F 和書 請求記号: 933.7/I-1、933.7/I-2】
・日の名残り 【 所在:3F 和書 請求記号:933.7/I】
・浮世の画家 【 所在:3F 和書 請求記号:933.7/I】

紹介者
白鳥 金吾先生
所属学部
短期大学部
書名 清貧の思想
著者名
中野孝次
分野
評論・エッセイ・随筆
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所在
閉架(CS121828)
請求番号
914.6/N