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グローバリズム出づる処の殺人者より

紹介文

 経済成長を続ける人口12億人の大国インド。この本は、インドの輝かしい経済成長の影に広がる闇を描いたサスペンス小説であり、2008年度にイギリスの最も優れた本に送られるブッカー賞を受賞している。小説とはいえ、この本に描かれた社会と人々は開発途上国のリアリティーに満ちている。教科書だけでは分からない経済成長の真実を知るために最適な一冊だ。 この本の主人公はIT産業で栄える町バンガロールに住む企業家の男バルラム。外国企業のアウトソーシングビジネスで従業員を夜中に働かせる会社向け配車サービスで成功した。バルラムは、中国の温家宝首相が「企業家精神」を学ぶためこの町を見学に訪れると聞き手紙を書く。その手紙でバルラムは自らの半生を語り、貧困から抜け出すためにかつての主人を殺したことを告白する。地主が貧農を食い物にするインドの農村に生まれたバルラムは、借金のかたに取られ小学校を中退。石炭ビジネスで儲ける金持ちの家の運転手となり、その家の息子アショクについてデリーに住むことになる。大都会デリーで堕落するアショク。一方、バルラムも道徳に従う従順な使用人であることをやめ、田舎に残した家族に加えられる私刑を予測しつつも、アショクを殺して金を奪い「企業家」となる新たな人生を選ぶ。極端な格差社会のインドで貧困層が正直に生きて貧困から抜け出すことは不可能であることが豊富なエピソードとともに描かれる。しかし、モラルも家族も捨てたバルラムには金はあっても心の平穏はない。  なお、この本の原書は平易な英語で書かれ、本学の図書館に収蔵されているので、そちらにもチャレンジしてみてはどうだろうか(※)。 ※原書は『The White Tiger』(Aravind Adiga著 、2008) 【2F多読本 933.7/Ad】

紹介者
浦野 真理子 先生
所属学部
経済学部
書名 グローバリズム出づる処の殺人者より
著者名
アラヴィンド・アディガ著、鈴木恵訳
分野
小説
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所在
3F和書
請求番号
933.7/A