先生のおすすめ本
「甘え」の構造 -新稿「甘え」今昔収録-
紹介文
今回ご紹介する本の著書である土居健郎氏は、私が最も尊敬する精神医学者の1人です。残念ながら昨年の7月に89才でお亡くなりになりましたが、氏の学問に対する妥協を許さぬ探求心、発想の柔軟さ、意外さ、それだけでなく心の臨床家としての厳しさと優しさ、それらは多くの人の心に刻み込まれていると私は思います。 とはいえ心の臨床に携わる若い精神科医や心理士などの中で、『土居健郎』の名前を知らないという人が、この頃では珍しくなくなりました。それはとても残念なことです。また専門家に限らず一般の人にとっても、土居氏の発想や物の考え方は刺激的で、様々なことを考える良いきっかけになるはずです。そう考えて、今回の紹介にこの本を選びました。 『「甘え」の構造』は、1971年に一般向けの啓蒙書として出版されて一世を風靡し、その後、長く読まれてきた本です。「甘え」という言葉は実は外国語に該当するものがなく、外国語に訳される時は「amae」とそのまま表記されています。土居氏は「甘え」をキーワードに日本人の心や社会の構造を鋭く分析し、さらに日本だけにとどまらず、「amae」の概念は人類に共通する心性であるという論を展開しています。 2007年に増補普及版として出版された今回紹介する本は、現代という時代が「人間関係についての一般の関心が急速に失われてきた」そのことによって二者関係を前提とする「甘え」について、今や人々は一方的な「甘やかし」や「甘ったれ」のことしか考えなくなった、という土居氏の鋭い指摘が巻頭に収録されています。日常語にこだわり、誰もがわかる言葉で考え、表現することにこだわった土居氏の世界をぜひ一度体験してみて下さい。
紹介者 |
鴨澤あかね先生
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所属学部 |
社会福祉学部
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書名 | 「甘え」の構造 -新稿「甘え」今昔収録- |
著者名 | |
分野 |
精神医学
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蔵書検索 | |
所在 |
3F和書
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請求番号 |
146.1/D
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