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ブルース世界地図

紹介文

 図書館の新たな魅力発見  この原稿を依頼されて最初に考えたのは、図書館にどんな本があるのだろうかということであった。実は図書館でジャーナルに載った論文や専門書を探すということはあっても、沢山ある書棚を眺めて面白そうな本を借りるということはこれまであまりなかったからである。そこで先ず図書館に足を運び、どの本について書こうかと図書選びをすることにした。図書館では、その年に刊行された書籍の多くが選定されていることを知っていたので、学術書とは異なるジャンルの本を探してみることにした。探したのは私の数少ない趣味のなかの一つであるブルースに関する書籍である。そして見つけたものが鈴木啓志著「ブルース世界地図」というものであった。当然、私自信も購入して自宅の本棚にも並んでおり、一度ざっと目を通して面白い本だと思ってはいたのだが、今回改めて読み直してみて、単なるブルース愛好家のための本と言うよりは、ブルースにまつわるアメリカの奴隷制度後のアメリカ資本主義社会の発展(氏はこれを個人主義の発展という観点からとらえている)とそれに大きく影響されて誕生したブルースを原点とする黒人音楽の歴史が新しい視点から論述されていた。その上で、ブルース音楽の本質をこれまでとは違った視点から論じているところは、強く興味をそそられるものであった。もちろんブルースシンガーの名前やその人達が歌った曲名は「てんこ盛り」である。 氏は現代アメリカ個人主義の負の価値の表現がブルースであり、個が歌詞に表現され、それと共同性を結びつけるものがブルースの持つビート、すなわちダンス音楽としての機能であるとしている。もちろん個人主義の正の価値とはいわゆるアメリカンドリームであり、誰もが一攫千金の夢を持つことができるというものであるが、資本主義の性質上、現代アメリカに象徴されるように貧富の差が増大し、貧困の立場に立つ者が黒人たちであり、この貧困こそが負の価値と呼ばれているものである。  現代の洋楽を初めとして多くのポピュラー・ミュージックはブルースを原点としており、ブルースとは切っても切り離せない関係の上に成り立っている。もちろんブルースの色が濃いものもあれば薄いものもある。たとえば、その関係性を色濃く残しているのがかのThe Rolling Stones であり、昨年12月2日に発売された彼らの最新アルバム「BLUE & LONESOME」では全12曲が1950年代から1970年代初頭に発売されたブルースのカバーであり、見事にブルース回帰を果たしている。さらにBob Dylanの2006年に発売されて話題を呼んだアルバム「Together Through Life」の一曲目などは典型的12小節マイナーブルースのコード進行に歌詞を乗せたものであり、ここでもブルース回帰が認められる。1960年代から活躍している彼らの現代洋楽およびJ・Popへの影響を否定する人はいないであろう。  氏は現代アメリカ個人主義の負の価値の表現がブルースであり、個が歌詞に表現され、それと共同性を結びつけるものがブルースの持つビート、すなわちダンス音楽としての機能であるとしている。もちろん個人主義の正の価値とはいわゆるアメリカンドリームであり、誰もが一攫千金の夢を持つことができるというものであるが、資本主義の性質上、現代アメリカに象徴されるように貧富の差が増大し、貧困の立場に立つ者が黒人たちであり、この貧困こそが負の価値と呼ばれているものである。  現代の洋楽を初めとして多くのポピュラー・ミュージックはブルースを原点としており、ブルースとは切っても切り離せない関係の上に成り立っている。もちろんブルースの色が濃いものもあれば薄いものもある。たとえば、その関係性を色濃く残しているのがかのThe Rolling Stones であり、昨年12月2日に発売された彼らの最新アルバム「BLUE & LONESOME」では全12曲が1950年代から1970年代初頭に発売されたブルースのカバーであり、見事にブルース回帰を果たしている。さらにBob Dylanの2009年に発売されて話題を呼んだアルバム「Together Through Life」の一曲目などは典型的12小節マイナーブルースのコード進行に歌詞を乗せたものであり、ここでもブルース回帰が認められる。1960年代から活躍している彼らの現代洋楽およびJ・Popへの影響を否定する人はいないであろう。  これ以上ブルースのことを書くと、指定された字数を大幅に越えてしまうので話を変えるが、今回図書館の本棚を眺めて再認識したことは、このようなブルースやジャズ、ロックを初めとするさまざまな洋楽に関連する本がしっかりと所蔵されていたことである。もちろん音楽は聴いたり、演奏することを通して楽しむものではあるが、このように文字を通して音楽に接し、自分の好きな音楽を別の観点から考えてみるのも楽しいものである。それを通じてその音楽に対する理解が深まり、別の楽しみも得られるはずである。 図書館は何も大学の勉強をするためにだけ利用する場所ではなく、自分の好きなものに新しい視点を与えてくれる情報も多く有しているのである。

紹介者
中村浩先生
所属学部
短期大学部
書名 ブルース世界地図
著者名
鈴木啓志
分野
軽音楽
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所在
3F和書
請求番号
764.7/S