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自閉症の僕が跳びはねる理由 : 会話のできない中学生がつづる内なる心

紹介文

 著者の東田直樹さんは、自閉症の当事者です。自閉症は、正式には「自閉スペクトラム症」と呼ばれる障害です。朝日新聞社発行(2017年3月5日付)の「Globe」によれば、「他人の気持ちを読み取るのが苦手だったり、興味や関心に偏りがあったりする。聴覚や視覚など感覚の過敏性を伴うこともある。」と解説しています。 本書は、東田さんが自身の体験をもとに、Q&A(問いに対する答え)方式で、自閉症者の個性(特性)について、誰にでも理解できるようにわかりやすく書かれています。  例えば、上記の著書「自閉症の僕が跳びはねる理由」の第1章「言葉」のなかで、「いつも同じことを尋ねるのはなぜですか」の問いに対して、「聞いたことをすぐに忘れてしまうからです・・・物事がわかっていないわけではありません。記憶の仕方が、みんなとは違うのです」と述べたうえで、「みんなの記憶は、たぶん線のように続いています。けれども、僕の記憶は点の集まりで、僕はいつもその点を拾い集めながら、記憶をたどっているのです」と述べています。さらには、同じことを繰り返し聞くもう一つの理由として、「言葉遊びができること」だと述べたうえで、「僕たちは、人と会話することが苦手」としながらも「いつも使っている言葉なら話すことができ、言葉のキャッチボールみたいで、とても愉快なのです」とも述べています。  私が、とりわけ感動した東田さんのことばを紹介したいと思います。それは、著書「自閉症の僕が跳びはねる理由:続」の第8章「人間愛」のところで、「人間愛とは、人間が人間であることを誇りに思うことではないでしょうか」と述べたうえで、「自分を相手に置き換えて物事を考えることができたり、かわいそうな人を見るとほうっておけない気持ちになったりするのも心があるからです。心にある良心は、それがなければ人間が存続できないものだと感じます」と述べています。そして、「人間が求め続ける愛の理想は、『共存』ではないでしょうか。共存への道を探し始めた先にこそ、新しい人間の進化の形があるのだと僕は信じています」と結んでいます。  本書を通じて、一貫している東田さんの眼差しや姿勢は、「共存」ということばに象徴されるように、人同士が障害の有無にかかわらず、同じ社会や時代を生きる輩(ともがら)として、互いに認め合い、尊重し合う関係を築きながら、ともに生きていく(共生)の姿なのではないかと強く思う次第です。 是非、一人でも多くの皆さんに、東田さんの生の声を聞くことのできる本書をお薦めしたいと思います。

紹介者
横山 穰先生
所属学部
社会福祉学部
書名 自閉症の僕が跳びはねる理由 : 会話のできない中学生がつづる内なる心
著者名
東田直樹
分野
障害児教育
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所在
3F和書
請求番号
378/J-[1]