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たのしい不便 : 大量消費社会を超える
紹介文
経済危機と言われています。景気回復のために消費拡大が叫ばれ、エコポイントで家電の買い換えが推奨されています。さて、それは本当にエコなのでしょうか。経済危機は、大量生産・大量消費でしか乗り越えられないのでしょうか。本書では、「大量消費社会」からの脱却の道筋が模索されています。 毎日新聞の記者である著者は、大量生産・大量消費・大量廃棄のサイクルに囚われたゆとりのない生活に疑問を抱き、また言うだけで終わってしまうことの多い新聞の記事を自省し、「不便な生活」を実践する決意をします。自転車で通勤する、自動販売機を使わない、外食をしない、季節はずれの野菜を食べないなどです。ただし、ここで著者が一番気をつけていることが、「楽しむこと」です。義務や強制では禁欲が続かないことは歴史が証明しています。エコでゆとりある生活に社会サイクルを変えていくためには、誰にでも続けられることが大切です。続けるコツは、自らが楽しんで取り組むことです。ですから、無理せず、周りに強制せず、楽しく不便することを決意しています。 ところが、実際に不便な生活を始めると、ついつい頑張り過ぎてしまったり、周りに不寛容になってしまったりと、失敗が訪れます。失敗し、反省し、新たな不便を取り入れ、様々な人と出会い、勇気付けられていく過程が月ごとに記され、親身になって読み進んでしまいます。難しい理論や理想ではなく、ひたすら手探りの実践で、どこまでできるか試してみよう、というリラックスした空気が読み手まで楽しくしてくれます。 驚くのは、この実践が今から10年前になされていることです。10年前にも、現在と同じようなことが叫ばれ、この社会サイクルが問題とされていたのです。それなのに、10年後の今も同じ問題から抜け出せていないことを思うと、少し恐くなります。さて今から10年後、今度こそ社会はエコとゆとりを取り戻しているでしょうか。
紹介者 |
職員B子
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書名 | たのしい不便 : 大量消費社会を超える |
著者名 | |
分野 |
生活問題
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蔵書検索 | |
所在 |
3F和書
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請求番号 |
365/F
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