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決壊

紹介文

 まず、この本は見た目が既に衝撃的です。装丁は、白の地に黒の明朝体で大きく「決壊」。帯に書かれるような煽り文句とあらすじがカバーに組み込まれています。カバーの下の本体は真っ黒。そして最も特徴的なのが、小口(ページの淵)が黒く塗られていることです。不吉な雰囲気が、読み始める前からひしひしと伝わってきます。  あらすじは、犯行声明つきの連続バラバラ殺人事件が起こり、ネットやマスコミを通じて世間は大騒ぎになり、類似事件や偽犯行声明が頻出する中、犯人が見つからない、というものです。最初の被害者はごく平凡で善良な会社員。そして被疑者として事情聴取を受けるのは、その兄のエリート国立国会図書館職員です。  なぜ兄が疑われるのか?様々な人の心理がいきかい、本当と嘘が分からなくなる過程が、研ぎ澄まされた無駄のない文体で語り進められます。現代の社会や家族といったものへの警告と憂いが、この作品には感じられます。作中事件の残酷さや犯人探しのスリルではなく、その事件をリアルに感じさせている周辺の物語こそがこの作品を奥行きのあるものにしています。  平野啓一郎は、99年に最年少で芥川賞を受賞しています。それから10年、聡明さが歴然と表れた文章を隅々まで味わえます。

紹介者
職員B子
書名 決壊
著者名
平野啓一郎
分野
日本文学
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所在
3F和書
請求番号
913.6/H