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旅の終わりの音楽
紹介文
映画『タイタニック』の、涙を誘うシーンの一つとして、恐怖と悲しみが渦巻く船上で、専属楽団員が、タイタニック号沈没のその瞬間まで演奏を続けることを決め、物悲しくも優しいアンサンブルを奏で始めたシーンをあげる人が少なくない。 この小説は、そんな楽団員たちに焦点を当て、彼らをモチーフにしたフィクションである。 タイタニック号の沈没により乗客たちが失ったもの。それは生命であり、未来であり、そして彼らの記憶の中にある「過去」であった。 何人もの人々の過去が、歴史に残されることもなく海へ沈んで行った。 無論、楽団員たちの、数奇な過去も海の底へと沈んで行った。 人の一生。それは、一つの物語である。 彼らの五つの物語を知るとき、タイタニック号の沈没で亡くなった1,500人余りの人々の一生を思う。歴史に残ることのない、名もない人々の人生。 『旅の終わりの音楽』。 「旅の終わり」、それは、この事故で亡くなった多くの人々の人生の終焉。 楽団員たちは、死の直前、彼らの過去を振り返っただろうか? 楽団員たちは、いつか忘れ去られてしまう己の過去、人生を誰に伝えたかっただろうか? 彼らが、「旅の終わりの音楽」として選んだ曲。それは、楽団員の一人が母親に教えてもらった曲だった。彼が、死の直前に振り返った過去。それは母親との思い出だったのかもしれない。
紹介者 |
幽玄
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書名 | 旅の終わりの音楽 |
著者名 | |
分野 |
ノルウェー文学
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蔵書検索 | |
所在 |
3F和書
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請求番号 |
949.63/H
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