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さぶ

紹介文

 山本周五郎の時代小説『さぶ』は、賢く器用で潔癖な英二と、のろまで不器用で気弱なさぶという、対照的な2人を描いた物語です。藤原竜也と妻夫木聡が主演する映画にもなっています。
優秀な職人である英二は、突然、窃盗の罪を着せられます。石川島の人足寄場に送られ、護岸工事に従事させられてしまいます。そこは、罪人収容所ではなく、社会復帰への訓練所ではあるのですが。極度の人間不信に陥った英二は、元々の潔癖な性格も相まって、周囲に心を閉ざし続けます。
 一方、さぶは、英二を信頼し続けます。周囲にからかわれ、笑われても、英二を見舞い続け、励まし、勇気づけます。そんなさぶさえも、英二は、疎んじてしまいます。
さらに、英二には災難が重なります。その極限状況のなかで、英二は、さぶを含めた周囲の人々の思いやりに気づくのでした。「風にも匂いがあることを気にも止めていなかった」ことを省察していきます。過去への後悔や恨み、未来への絶望に目を奪われていた自分から、今ここの自分、それを支える人々に視点が移っていきます。愚かに見えるさぶが、実は、強くて大きく、温かい存在であることにも。
 私は時代小説が好きで、特に山本周五郎は、何度読んでもその深さに感動します。長編3部作と呼ばれる『樅の木は残った』『ながい坂』『虚空遍歴』、映画でも『雨あがる』『その木戸を通って』などがあり、親しみやすいです。「人間の真価は、何を為したかではなく、何を為そうとしたか」と語った周五郎。壮烈な結果ではなく、地道で苦しい過程のなかに真の幸福が隠れていることを教えてくれる作品です。

紹介者
大友 秀治 先生
所属学部
社会福祉学部
書名 さぶ
著者名
山本 周五郎
分野
小説
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所在
閉架
請求番号
913.6/Y